『レ・ミゼラブル』における好奇心の役割
山田紗矢佳山口大学人文学部4年
ヴィクトル・ユゴーによって書かれた長編小説『レ・ミゼラブル』では、物語が何度も劇的な展開を迎える。そしてその展開のきっかけには好奇心が関わっており、多くの場合登場人物たちの人生を悪い方向へと向かわせてしまう。そのような重要な役割を好奇心に与えた理由は、作者は他人のためにではなく自分のために抱く好奇心は悪いものであると読者に伝えたかったからである。作者にとって人を不幸にする好奇心を抱く人物は教育を欠き、道徳的に発展していない。つまり好奇心を抱く人物は精神的進歩をしていない人物である。作者は主人公のジャンヴァルジャンが物語のなかで精神的進歩を成し遂げる様子を描くことで、読者の精神を啓蒙しようとしていた。そのような目的があったため『レ・ミゼラブル』において好奇心は重要なモチーフとなっているのである。