※著者肩書きは発表時のものです

教育における「わかる」についての一考察

大藤渉山口大学教育学部小学校総合選修4年

本研究は、教育における「わかる」ことを中心とする授業とその構成を成り立たせる諸概念を批判的に考察することによって、所与の枠組みを保持したまま「わかる」あるいは「わからない」と二分法的に捉えることの問題を明らかにする(第1章)。こうした問題意識をもとに、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの『差異と反復』を手がかりに、経験を超えた次元における「わからなさ」と経験的な次元で「わかる」、「わからない」と判断することを対比して考察する。そこで、〈私〉を確固たる前提として対象を「わかる」、「わからない」と判断する見方ではなく、所与の枠組みには判断することも還元することも不可能であり、判断する位相自体を壊すような新しいもの、つまり「わからなさ」との関係を結ぶことでひび割れる《私》という見方を示したい(第2章)。最後に、教育において「わからなさ」を射程に入れることの意義を明らかにするために「問題」概念について考察する。あらゆる局面につねに妥当するものごとを解答とみなすことが、「わからなさ」の捨象につながることを明らかにした後、「潜在的なもの(問題)」と「現働的なもの(解)」の関係を論じる(第3章)。
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