※著者肩書きは発表時のものです

関連項目:ハイデガー

ハイデガーに於ける真理の本質
―正しさを可能にする根拠と形而上学の克服―

花本直美山口大学 教育学部 社会科教育選修 4年

真理とは一体何だろうか。真理は、たとえば神のような絶対的なものとの一致なのだろうか。そのように考えることは思考を止めてしまわないか。マルティン・ハイデガー(Martin Heidegger)は「真理」について、単なる事実の表面的な一致ではなく「存在」との深い関わりがあると考えている。「絶対的なもの」ではなく、それが「存在する」という事実を追求するハイデガーの真理論に興味を持ち、彼の思索を明らかにしたいと考えた。主要文献は『真理の本質について』という講演である。ハイデガーは真理の本質を、それぞれの「真理」を一般に真理として特徴づける唯一のものに注目して考察する。そしてその思索は存在論へと移ってゆくのだが、彼は「形而上学」に対し、「存在」へのアプローチの問題点を指摘し、別の哲学的アプローチを示すことで「存在」の把握を目指す。本論文は「形而上学の克服」を考察し、存在や真理に対する深い理解が得ることが目的である。ハイデガーがこの講演で何を示しているのかを考察し、正しさを可能にする根拠と、「形而上学」ではない「存在」への向き合い方を示したい。
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ハイデガーにおける「歴史性」の問題の再検討

廣田智子山口県立大学

ハイデガーは主著『存在と時間』(1927年)から一貫して、「自らに固有なもの」や「歴史性」を重視している。本発表では、1936年から38年の『哲学への寄与論稿』を対象として、ハイデガーの「存在の歴史」の構想における「別の原初への移行」について考察することで、ハイデガーにおける「歴史性」の問題を再検討する。 歴史的に規定された人間存在が共に生きるあり方をめぐっては、一般に、次の二つの立場が考えられる。一つは歴史性を重視する立場であり、もう一つは、それを超越しようとする立場である。前者は、所与の歴史的共同体の外部の声を排除して、自己を絶対化してしまう危険を有すると見られがちである。この問題を検討するために、発表では、まず、「別の原初への移行」の基本構造を確認し、次に、その背景にあるハイデガーの「存在の歴史」構想について考察する。これらの作業を通して、ハイデガー哲学における「歴史的なもの」の重視の積極的意義を明らかにすることを試みる。
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