読書会だより

より良い自分と本当の自分

今回の哲学的問いは「より良い自分になりたいと思う自分は、いま・ここで働いている本当の自分になれるのか」でした。

A

自分と自己は同じですか?
佐野
どういう意味ですか?

A

自分は英語で言うとIで、自己はmy selfです。Iはそうしようと思っている自分で、my selfはそれを動かしているものです。
佐野
それなら「自分」と「本当の自分」の区別に重なりますね。偽我と真の自己と言ってもいい。

B

真の自己に成り切っているときにはそのことは意識はありません。それを意識したらすでに真の自己ではありません。
佐野
それなら真の自己になるというのは無理のようですね。

C

飢えた状態で、迫られるものがあって知識や技術を求める在り方が真の自己では?

D

それはより大なる自己を求める小なる自己だと思います。

E

私はより良い自分になろうとは思っていません。すべてを捨てて楽になりたいです。
佐野
それもある意味で「より良い自分」になろうとしていることでしょ?人間は「より良い自分になりたい」と思うことをやめることはできないのでは?それがないと次なにしていいか分かんないでしょ?例えば皆さん、今日はここに来ていますよね。それはそうするのがよいと思ったからで、それをすることでより良い自分になろうとしていた。そうじゃないですか?

F

何も考えないで来たというのは?
佐野
読書会にですか?それは危ない。人間は必ずより良い自分になろうとしています。やめられない、そうじゃないですか?

D

罪深いんです。
佐野
え、どういうこと?

D

「我」という言葉を持った時から自分を出発点にしかできない。どうにもならないんです。だから罪深い。西田も「罪を知る」と言っていました。
佐野
それから?それで本当の自分はどうなるの?

G

それでも本当の自分って分かるのかなあ。僕は無理だと思うんですけれど
佐野
はい。いいところですがここでテキスト講読に入りましょう。
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著者

  • 佐野之人 さの ゆきひと
  • 現在、山口大学教育学部で哲学、倫理学を担当しています。1956(昭和31)年に静岡県富士宮市で生まれ、富士山を見ながら高校まで過ごしました。
    京都大学文学部を卒業して文学研究科に進み、故辻村公一名誉教授のもとでヘーゲル、ハイデッガー、西田哲学などを学びました。東亜大学に2009(平成21)年3月まで勤務し、同年4月より現職です。

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